女性と頭痛(片頭痛)について
日常的に頭痛があると、学校や仕事、休暇や趣味の活動が思うようにできず、真剣にとりくみたいという熱意や人生を楽しみたいという積極性がさまたげられることがあります。
特に女性の頭痛は、ライフステージによって頭痛の様子が変化しますので、頭痛の特徴を知り対処法を知っておくことは、生活の支障を減らすためにとても大切です。市販薬では治りづらい重度の頭痛が多いことも女性の頭痛の特徴です。
頭痛の特徴を知り、症状に合った予防と治療の方法を知ると、これからの日常生活をより充実した毎日にすることができるかもしれません。
女性に多く見られる頭痛は、緊張型頭痛と片頭痛です。
緊張型頭痛は一般的に頭がしめつけられる感覚と表現されますが、頭がズキズキと脈打つような痛みを感じたことがあるなら、それは片頭痛かもしれません。
片頭痛の有病率(その病気を有している人の割合)は、女性が男性の2~3倍です。
片頭痛が最も多い年代である30歳代女性の約20%が片頭痛を患っていると言われています。
女性の頭痛の原因
頭痛の原因は、姿勢や生活習慣など様々ですが、女性ホルモンもそのひとつです。
エストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンは、月経周期と妊娠において重要な役割を果たします。エストロゲンの分泌量は、片頭痛をひき起こす脳内の化学物質に影響を及ぼします。排卵前後や月経前にエストロゲンが低下してくると片頭痛が起こりやすくなります。また、閉経に伴いエストロゲンの分泌量が減少すると、片頭痛の頻度が減る傾向があります。
女性ホルモンが関係して起こる頭痛の誘因には次のようなものがあります
- 月経
- 経口避妊薬を服用している
- 妊娠
- 授乳
- 閉経
月経に伴う頭痛
思春期前の男女の頭痛発症率は同程度です。しかし、思春期を迎え月経が始まると、女性の方が頭痛の頻度が高くなり、更年期以降は頭痛の頻度が再び安定します。
生理直前のエストロゲンの減少が頭痛を引き起こすことがあります。
片頭痛を持つ人の多くは、生理前または生理中に頭痛発作が起きると感じています。
月経周期が頭痛に影響しているかどうかを確認するには、頭痛ダイアリーを記録してみてください。月経に関連した頭痛のパターンが見られる場合は、より良い治療のために以下のような配慮ができます。
- 毎月の月経が始まる前に薬を服用し始めると、頭痛の痛みを軽減するのに役立ちます
- 片頭痛の治療薬であるトリプタン製剤にはいくつか種類がありますが、月経時片頭痛に使用しやすい薬があります
- トリプタン製剤だけではなく、症状に合わせて、月経時に子宮から分泌されるプロスタグランジンをおさえる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用します
- 経口避妊薬やホルモン補充療法が、頭痛緩和に効果があることがあります
経口避妊薬(OC、ピル)と頭痛
自然な月経周期に伴うエストロゲンレベルの低下と関連する片頭痛は「月経時片頭痛」と呼ばれ、片頭痛を持つ女性の5人に1人が罹患しています。自然な月経周期をおこすような内服方法で避妊薬を服用すると、片頭痛も誘発される可能性があります。月経周期に関連する片頭痛がある場合は、エストロゲンの低下が少ない経口避妊薬の使用方法を検討してみてください。
プロゲステロン単独の避妊薬(ジエノゲストなど)は 、前兆の有無にかかわらず片頭痛のある女性が安全に使用でき、血栓や脳卒中のリスクを高めることはないようです。しかし、プロゲステロン単独の避妊薬が片頭痛を軽減する効果があるかどうかについては、結論が出ていません。
妊娠と頭痛
片頭痛は妊娠可能年齢の女性に多いので、妊娠中・授乳中の片頭痛治療をどのように行うか計画を立てることはとても重要です。
妊娠中は片頭痛が軽くなったり治ることがあり、妊娠後期では60~80%の女性患者の片頭痛発作が軽減すると言われています。これは、妊娠初期にエストロゲンレベルが上昇し、妊娠期間を通して高い状態が続くためと考えられます。
妊娠中に頭痛が軽くなったとしても、出産後に再発することがあります。分娩後1ヶ月以内に半数以上の片頭痛患者で頭痛が再発すると言われています。これは、出産後にエストロゲンレベルが急激に低下するためです。また、ストレス、食生活の変化、睡眠不足なども原因となる場合があります。
母乳栄養が片頭痛の再発を抑える可能性があるという報告があります。
定期的に頭痛がある場合は、妊娠中に安全に服用できる薬について、妊娠する前にあらかじめ担当医に相談しておくとよいでしょう。
更年期と頭痛
女性ホルモンが関連する片頭痛は、最後の月経の前の数年間、いわゆる更年期に、より頻繁になり、痛みが増すことがあります。これは、最後の月経が近づくにつれてホルモンレベルが上昇し、その後下降するからです。閉経後はエストロゲンの変動が落ち着くため、片頭痛の症状も和らぐことが多いです。
更年期の頭痛には、漢方薬が有効なことがあります。当帰芍薬散、桂枝茯苓丸などが用いられます。
ホルモン補充療法(HRT)は、更年期障害および閉経期の治療に用いられることがあります。HRTは、頭痛を改善することも、悪化させることもありますので、動悸、肩こり、吐き気、不正出血など更年期の身体の症状について相談し、治療法の選択を行うことが大切です。
ライフスタイルに合わせた頭痛治療
片頭痛の症状をより軽くする、頭痛発作を起こさないようにするために、生活習慣を見直してみましょう。
- アルコールやストレスといった頭痛の誘因を避け、水分補給を欠かさず行いましょう。
- カフェインの摂取が睡眠の質に影響を与えていると感じるときには、コーヒーやエナジードリンクの飲み過ぎを控えましょう。
- 睡眠、起床、食事の時間を規則正しく保つことはとても大切です。
- 首や肩の筋肉の理学療法(マッサージや運動)は、 緊張型頭痛の原因となる首や肩の筋肉の硬直を和らげるのに効果的で、片頭痛の発作予防にも繋がります。
片頭痛や緊張型頭痛は、日常生活を楽しむことができるように予め管理することができます。それは、普段の生活の中で頭痛を起こさないための予防法を実践し、症状に合ったふさわしい治療に出会うことで可能となります。
女性ホルモンがどのように影響し、どのように頭痛を引き起こすのかを理解することが、ご自身に合った治療法を見つける第一歩です。
よくある質問
女性の片頭痛は市販薬で治りますか?
市販の鎮痛薬が効くこともありますが、片頭痛に特化した薬は病院で診察・診断を受けたうえで処方されます。「急に頭痛が起きた場合の対処方法はありますか?」を参考にしてください。
女性の頭痛で日常生活上気を付けることはありますか?
睡眠、起床、食事の時間を規則正しく保つことが大切です。
アルコールやストレス、肩こりといった頭痛の誘因をできるだけ避けましょう
女性の頭痛は何科を受診すればよいですか?
脳神経外科、脳神経内科、あるいは、頭痛ダイアリーを記録して月経周期に関連する頭痛があると感じたときは婦人科を受診して担当医に相談するとよいでしょう。
片頭痛に良くない食べ物、良い食べ物はありますか?
アルコールやカフェインは血管に作用しますので、片頭痛発作の誘因になることがあります。少量であればカフェイン摂取が片頭痛予防になると、これまでの頭痛経験から感じている片頭痛患者がいます。
女性の頭痛・片頭痛は遺伝しますか?
片頭痛は家系内発症が多く、遺伝が関係する可能性が高いです。
しかし、片頭痛の原因となる遺伝子が見つかっているわけではありません。複数の遺伝子が関係していると考えられており、また、さまざまな環境や生活の要因が影響して初めて片頭痛を発症すると考えられています。
急に頭痛が起きた場合の対処方法はありますか?
片頭痛の時は暗い部屋で寝たり横になったりしてみましょう。
ご自身の頭痛の症状に合わせて、適切な薬を適切なタイミンで内服しましょう。
鎮痛剤は片頭痛に特化した薬ではなく、体全体の痛みを引き起こす物質の働きをおさえます。例えば、足首を捻挫し、同時に片頭痛発作も起こしている場合、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は両方の症状の痛みを軽減する可能性があります。 一方、トリプタン製剤、ジタン製剤は片頭痛に特化した薬です。片頭痛をひきおこす疼痛経路に作用しますが、足首の捻挫など、他の一般的な痛みには効果がありません。
鎮痛薬もトリプタン製剤も服用を遅らせすぎないように注意してください。片頭痛発作の場合、薬の内服タイミングをのがすと、薬が効く可能性が低くなることがあります。